※ 楽譜と理論が出てきます。苦手な方、スミマセン。
当たり前ですが、ゴージャスにハモるということは、和音を使うということですな。
それで、本格的和声学や対位法は使わないまでも、一応、覚えておきたいことを書きます。
【1.和音の基礎】
さて、下の図を見て下さい。
和音は、下の図のような構成になっています。

一番下の音が「根音(第1音, Root)と呼ばれ、順次、第1音から音階上で1つずつ上に数えて行って「第3音」「第5音」・・・と呼ばれています。
さらに、調がわかっていれば、和音には以下の役割があります。今回の場合は変ロ長調です。

(1)が主和音(曲や楽節の最初や最後に使われる和音。ジャズ理論では"Tonic"と呼ぶ)
(2)が下属和音(曲や楽節の最初や途中で使われる和音。ジャズ理論では"Sub-dominant"と呼ぶ)
(3)が属和音(曲や楽節の最初や途中、特に最後の前に使われる和音。ジャズ理論では"Dominant"と呼ぶ)
(4)が属7和音(属和音に第7音が加わった和音。属和音と同じ使われ方で、古典で許される唯一の不協和音)
転調さえしていなければ、メロディーの流れの中でどれかが大体は当てはまり、和音がきれいに流れるはずです。
順番的には、属和音→下属和音の進行を除けば、全てあり得ます。
こんな要領で。

メロディーが和音から外れる場合がありますが、これは「非和声音」と呼ばれている、メロディーの流れの中で和音とは別に出てくる音です。とりあえず放っておいて良いです。もちろん、下に色々書いてある理論を駆使してメロディー1つ1つに和音を付けても良いけれど、最初からそれをやってもカルテットでゴージャスにハモらせる段階になって色々と矛盾が出て来て、徒労に終わる場合があります。最初の段階では流れだけ掴むと良いです。
上の譜面自体はあんまりゴージャスじゃないですが、ここまでの理論ではこれが限界。以降で何とかします。
【2.和音のちょっと細かいこと】
上記は、小中学校の音楽の教科書に書いてあります。ですが、それだけだと編曲に限界があります。
2-1.ハモる、ハモらない
ゴージャスかどうかは別として、ハモるかハモらないかは、2つの音の関係で決まります。
完全8度音程。これはユニゾンと呼ばれ、理論や人間の耳では「同じ音」として扱います。
完全5度音程、完全4度音程も、ゴージャスにハモらせる場合は、ハモると言うよりは、どちらかというとユニゾンの「同じ音」の感覚に近く、「補う」という感覚です。管楽器アンサンブルなら、4度や5度でもゴージャスにハモっているように聞こえますがね・・・
長3度と、その転回系(上の音を1オクターブ下げて基準にした)の短6度。
短3度と、その転回系(上の音を1オクターブ下げて基準にした)の長6度。
厳密には、これらが「ハモる」音程関係です。
以下は「ハモらない」音程関係です。
増4度(減5度):ハモらな度「1」
一番弱い不協和音です。属7和音の第3音と第7音の間に出てくる音程関係です。
長2度、短7度(もしくは単に7度と呼ぶ):ハモらな度「1+α」
全音(2度)系のぶつかりです。サウンドを変化させる「ここぞ」という場面で使う不協和音です。
短2度(半音)、長7度、減9度:ハモらな度「2」
半音系のぶつかりです。これはきれいにハモりません。
実は、もう少し複雑な和声を作る場合だと、これらのハモり度にも(歴然とした)差があるのですが、今回のゴージャスにハモらせる観点では好んで使うことはないと割り切ります。
2-2.他にもある、ハモる和音
最初に、和音は主和音、下属和音、属和音、属7和音の4種類と説明しましたが、その調の音階の中には他にもハモる和音があります。

これらは、ジャズ理論で「代理コード」と呼ばれている和音ですが、今回の場合、意味は深く考えずにゴージャスにハモらせるためのつなぎの和音、とでも覚えていて下さい。
2-3.転回形

和音は、どの音を一番下にするかによってフィーリングが変わります。根音が下だと「安定した」感じ、第3音が一番下だと「何となく落ち着かない」感じ、第5音が一番下だと「4度上に進みたい衝動に駆られる」感じだと思います。また、第3音や属7和音の第7音を低めの内声奏者に充てるとサウンドが安定します。ま、実を言うと、別な事情に左右される場合が多いので、そういうものか、ぐらいに考えておくと良いでしょう。

転回形の使い方の例です。だいぶ動きがスムーズになったかと。
余談になりますが、ジャズやポップスでのコード指定の場合、ほとんどの場合ベーシストはとにかく根音を弾きます。なので、一番下の音を指定したい場合は楽譜を書くか分数コードを書いた方が無難です。
2-4.密集和音と離散和音

和音は、ドミソが隣り合っている「密集和音」と、離れている「離散和音」があります。
フィーリング的には、密集和音は一体感と厚みがあり、離散和音は少ない人数で音域を広く使え、パートの独立感とワイド感があります。管楽器でゴージャスにハモる場合、密集和音の方が上手くハモるのですが(人数が多い吹奏楽とか、金管10重奏なんかは密集和音が良い)、ま、これも別な事情に左右される場合が多いので、そういうものか、ぐらいに考えておくと良いでしょう。
それより、ゴージャスにハモる場合は、一番下とその1つ上の間を除いて、音と音の間は6度以内が良いです。それより離れると別なパートに聞こえてしまいます。
同時に、3人だと離散和音の種類に限界があり、トリオ演奏でのゴージャスなハモりの雲行きが怪しくなってきます。

離散和音の使い方の例。これで、音域を広く使えます。
2-5.低すぎるとハモらない
ヘ音記号のFよりも下には、音を1種類にすることをお奨めします。上記で「ハモる」音程関係でも、周波数の関係で、低すぎるとハモりません。本当は厳密なルールがありますが、「Fより下は音1つ」と覚えておけば安全です。
2-6.4人以上の和音
3人でも十分にゴージャスにハモりそうですが、実は4人以上が理想です。
○理由その1は、1人のメロディーを3人(ドミソの3和音)で伴奏できることなんですが、これはアンサンブル全員でのゴージャスなハモりとは直接関係ないので今回は詳しい説明を省略します。
○理由その2「低音の存在」
ゴージャスなハモりを演出するのは、なんと言っても「低音」であります。
4人いて、誰かが低音に回れば、低音の支え+上3人でゴージャスにハモります。もちろん、上が4人いれば中高音だけでゴージャスなハモりが1個作れるわけでして、これが五重奏です。
○理由その3「補うことによる豊かなサウンド」

3人(ドミソの3和音)だと、実は和音が完結してなくて、もう1人が同じ音を補うことによってゴージャスなハモりが実現します。これがカルテットの真骨頂で、私は1分ちょっとのゴージャスなハモりのために旅費3万をはたいて浦安まで行ったのであります。カルテット、一度やったらやめられぬ!
えーと、
長和音の場合、根音か第5音を重ねます。第3音の重複は和音のバランスが崩れて、かえってゴージャスでなくなります。短和音の場合は、どれを重ねても構いません。
また、長和音、短和音、属7和音ともに、第5音を省略可能です。なぜならば、最初の方に書いたように「5度音程はハモっているのではなく、補っている」からであります。ただし、属7和音で第5音を抜いて第7音を重複させるのはやめた方が良いです。
チョイとまとめてみます。5人以上の場合も参考になるでしょう。
第3音:必ず必要。ただし、特に長和音の場合は人数がそんなに要らない。
第5音:省略可能。ただし、大人数をここに充てると、サウンドがゴージャスになる効果はある。
属7和音の第7音:必ず必要(というか、省略すると普通の属和音になる)。ただし、人数はそんなに要らない。
【3.メロディーとハモりのデザイン】
これは、対位法に相当する部分です。
3-1.平行、斜行、反行
上声と下声が同じ方向に行くのを「平行」と呼びます。
フィーリング的には「一体感」「スピード感」と言ったところでしょうか。
上声と下声のどちらかが動いて、もう片方が同じ音を続けるのを「斜行」と呼びます。
フィーリング的には、平行と反行の中間的な特徴を持ちます。
上声と下声が上下逆の方向に行くのを「反行」と呼びます。
フィーリング的には「パートの独立感」「ワイド感」と言ったところでしょうか。
3-2.やめた方が良いこと
同一パート間の平行5度と平行8度は、古典では禁則です。
ここで「4人のうち2人がオクターブでメロディーも禁止なの?」というツッコミが入りそうですが、この場合は、オクターブ上のメロディとオクターブ下のメロディーは「同一パート」ではありません。2人ともメロディー担当者でして、なんかややこしいですが、禁則はあくまでも、ゴージャスなハモりを直接担当するパート内の人間だけに適用され、メロディーの人は別です。
他にも禁則がありますが、今回は省略します。
【番外編:何であれ、音が動けば曲は進む】
これは私の持論、というか、皆さんそう思っているような気もしますが、理論云々よりも、音が(耳で聴いて)リーズナブルに変化すれば音楽なんだと思います。そして、そのリーズナブルさの許容範囲の違いがジャンルの違いなんだと思います。
例えば、こんな編曲もあります。

これをゴージャスなハモりだと思うのかは読者に任せますし、理論やコード云々よりも、内声(アルトとテナー)の半音の動きがリーズナブルで、音楽に変化を出している、と私は思います。
あ、バリトンのオクターブ上にもう1人いると良いですね。するとクインテットであります。
編曲の可能性はほぼ無限にあるかと。まずは自由に考え、許しがたいサウンドは直しながら・・・それでもどう直して良いかわからない場合は理論の登場、といった具合ですかね。
最後に、書き忘れたフィーリング。
必ずしもそうなるわけじゃないですが、
音が高くなる:盛り上がる
音が低くなる:盛り下がる
音程変化が激しい:強い表現
音程変化が穏やか:弱い表現
以上も、何となく考えておきます。
追伸:ここまで読んでくれた方へ。
お疲れさまでした。
実は、編曲する時はこのぐらいのことを常に頭に入れておいて、それぞれのバランスを取りながら色々と調整しつつ、譜面を書き上げて行きます。なので、あえて一気に書きました。
そしてこれは、やっぱり「ナンチャッテ理論」であります。フィーリングを軸に、ちょこっと理論で補う要領で使うと良いでしょう。もちろん、本格理論を暗記すれば短時間で譜面を量産できますが、ま、プロじゃないですから、秋の夜長にパソコンとキーボードを片手(いや、両手か)に丁寧に作るのも一興では?
もう1点。本文中でゴージャスなハモりをしつこく連呼しているのには理由があって、
上記の理論はあくまでも、同系統の音色と音量、つまり同一パートがゴージャスにハモるための理論です。異なるパート、例えばサックスのメロディとトロンボーンの和音とエレキのベースラインなんかの場合は、この理論が適用されるのはトロンボーンの人たちの間だけです。メロディーとベースラインは「別物」になります。
ついでに蛇足ながら、同一パートなのか異なるパートなのかは客がどう感じるか次第でして、同系統の楽器で音色が似ている場合、ソリストと伴奏がゴージャスにハモっちゃう、別な言い方をすればメロディーが伴奏に埋まっちゃうことがあります。吹奏楽や管楽器のアンサンブルでは要注意です。もちろん、合奏の一体感の観点では、良いことでもあると思います。編曲者はメロディーの人数や音域、そして伴奏する楽器の種類選びに注意、演奏者は、ソロ用、ユニゾンのメロディ用、ゴージャスなハモり用・・・と複数の音色とダイナミックレンジを持つのも1つの考え方かもしれません。
次:その4:実例(イントロ)
前:その2:人数と音域
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