(取材日:4月22~5/13日, 2009)
5月13日深夜に記事を書きましたが、疲労が激しく文章のリアルさがイマイチだったため、翌日(14日)に加筆修正しました。
※理論と現実は異なります!
ちなみに、前回までの経緯は、その1、その2、その3であります。
さて、本日(13日)は、3週間ほど泥を吐かせた天然スッポン料理の決行日である。
色々と事前調査し、イメージトレーニングはバッチリである。うーむ、完璧だ!
【第1段階】首を落とす。
以下の方法ではダメでした。
【理論】「スッポン君をシンク(流し場)に逆さまに休んでもらいます。腹の甲羅の真中辺に水道の蛇口から水を流します…。そうするとスッポン君は”起き上がろうとして”足を甲羅から出します。それでも起き上がれないと、今度は首を目一杯限界まで出して、シンクに頭を付けて起き上がろうとします。
少し、残酷ですが、この瞬間に料理用ハサミを首を挟むように添えて一気に”ザクッ”と首を切断します…。」
料理ハサミでスッポンの首は落とせません。皮が硬くてまるっきり切れません。ダメっす。

かといって、ひっくり返して首を伸ばしたところを手で掴もうとしても、掴む前にあっという間に首を引っ込められてしまってどうにもならず・・・途方に暮れます。ホントに・・・
そこで、タオルを巻いた割り箸をスッポンに噛ませて引っぱり、現場に居合わせたもう1人が反対側から足を持って引っ張り・・・一体誰が切るのであろうか・・・人員が1名足りない!
そこに3人目が見物に現れたので、彼を使って3人のチームプレーで(引っぱり組2人+斬る人1人)、1匹目を成敗!土佐刃物の出刃包丁を使ってもなかなか切れません。力一杯グリグリやって、やっと切断に成功でした。
その後、2匹目を同じ方法で土佐鋼の出刃包丁を入れたところまでは良かったけど、既に包丁の刃が鈍っていて切れない!
「頸椎は断てなかったけど脊髄は傷つけたであろう・・・」と油断して包丁を一旦外していれ直そうとした瞬間、再び首を引っ込められて、今度はなかなか出てきません。噛ませて引っ張り出そうにも、出血多量でだんだん力がなくなってくるし・・・最悪の状況に陥りました。散々苦労しつつも、何とかして首を引っ張り出して、やっとのことで2匹目を成敗でした。
首を切るのに要した時間は30分!先が思いやられる・・・
【第2段階】血を採取する。
はっきり言って、それどころじゃありませんでした。血抜きされて行くスッポンを呆然と眺めるだけで精一杯でした。
【第3段階】内臓を除去する

【理論】甲羅とエンペラの境に包丁を入れ、甲羅を取り外す・・・おぉ、鮮やかな包丁捌きだ(左写真)!見物のつもりが完全に調理に巻き込まれたもう1名を含め、今回の料理人は全員魚を捌けます。
【現実】そんなに簡単に行きません。胸膜や腹膜が邪魔になるし、甲羅と首やしっぽの骨が繋がっているので、それを切断しながらじゃないと甲羅が取れません!
大の男が2人掛かりでカメの甲羅を取り外す図(右写真)。
骨はともかく、胸膜や腹膜が包丁でなかなか切れません。相当切れる包丁じゃないと無理です。
とにかく何とかして甲羅を外したのが下の写真です(かなり汚いけど)。

【理論】この状態から、まず膀胱を取り出し、その後、包丁で上半身と下半身を分離し・・・

た、筈なんですが、下半身を開いてみると、何故か膀胱がちゃんとあります。膀胱に似た何か別な物を勘違いして切除したらしい。

続いて、膀胱とともに食べられない胆嚢(苦玉)を慎重に取り去ります。肝臓にくっついていたので、ヒトの内臓配置から想像するに、これは間違いないであろう。
ただし、もう1匹は、ひっくり返して上半身と下半身を切り離す時に胆嚢をつぶしてしまいました。身全体とまな板を素早く洗ってことなきを得ましたが、かなりデンジャラスです。素人の場合は、上下半身を分離する前に胆嚢も取った方が良いのかもしれません。
ここから先は、危険な臓物はないので、エンペラを切り取って行き、四つ足の爪を切り飛ばして、手足は皮をむき(むかなくても良いらしいが)肉や内臓をどんどん切り取れば良いので簡単・・・の筈なんですが・・・内臓は膜が付いてて取りにくいし、皮はヌルヌルしてむきにくいし、骨は硬くて切りにくいし・・・物凄く大変でした。根気が要ります。
また、首は落とせなかったけど、このタイミングで小型の料理鋏が役に立ちます。

首を落とそうと頑張り始めてから悪戦苦闘すること2時間半の後に切り出したハラワタ一式。もちろん、鍋に一緒に入れて食べます。身も内臓もエンペラも≒スッポンを丸ごと鍋に入れて食べるので「丸鍋」と呼ばれています。
【第4段階】味付け

湯通しする。しかも2回。
特にエンペラは、湯通しすると、表面の透明な薄皮がペリペリと剥がれてくるので、それを除去します。

その後、甲羅と肉で出汁を取るべく、アクを取りながら1時間煮込む。
アクを取りながら・・・とにかくアクが出まくります。もくらもくらと出るわ出るわ、たちまちアクの山ができた。

スッポンのみを昆布と一緒に1時間煮た後で(実際は、頃合いを見計らって)、酒と生姜と塩で味付けし、野菜を入れて完成。醤油入れるの忘れたかも・・・
それで味ですが、
ゲテモノ呼ばわりされがちなスッポンですが、実は、凄く上品で繊細な出汁が出ます。その上品さは、鶏ガラの比ではありません。鶏よりずっと洗練されている。肉質も、鶏肉よりあっさりしています。それにエンペラのコラーゲンや内臓のコクが加わって・・・それはそれは絶品であります。
ただし、そこは天然で、いくら生姜で臭みを消しても、後味にスッポンの臭みが濃厚に残ります。
天然の良いところは身質のパワーです・・・例えようがないマジな歯触りです・・・これは食ったことがないスッポンです。凄いぞ、天然スッポン!
とにかく、ホントに大変でした。久しぶりに、本気で大変な目に遭いました。
食の基本は、「可哀想だけど、他の命を奪うことによって自らの命を保っている」ことを理解することに尽きる。仮に動物のみを他の命と定義し、殺生を禁じたとしても、肉屋の肉は誰かが屠殺した鳥類か哺乳類だし、たとえ肉類を断っても、穀類などの植物は、農家のおっさんがライバル(昆虫など)を駆逐して得た農作物です。「頂きます」は、自らが生きるために奪ってしまった命への感謝の言葉なのです(深い仏教思想)・・・そんな理論はどうでもよいです。
はっきり言って、現場では「可哀想」どころじゃないです。とにかく必死!
結論:「理論と現場は違う!」