(取材日:3月29日, 2009)
「楽器は目的を持って買う物だ」というのはどこかで聞いたような話ではあるが・・・
筆者のシチュエーションは「フルート1人、オーボエ1人、クラリネット1人、金管楽器17人!、打楽器2人の編成で、サックスとの持ち替えで、フルートを持った時は主にクラシックを演奏する」という、かなりアホな状況である。
まず問題になるのは金管中心の編成の中での音量と音の通りである。次に厄介なのが、サックスを派手に吹きまくった後でフルートに持ち替えた時、唇の感覚がおかしくなって音が出なくなる可能性である。これらを解決するのは「不可能」とは思いますが、少しでも「現場に強い」楽器が欲しいものです。
というわけで、楽器を買い換えることにした。
さて、楽器店で全部試奏するわけにも行かないので、事前にモデルを絞ります。
【ポイント1】スペック
1-1. Eメカニズム(通称「Eメカ」)
オプションで付いてたりなかったりします。ないやつに付けると5万円ぐらい価格アップ!
持ち替え絡みの外しを減らすための、Eメカを付けるための買い替えである。
判断:Eメカ付き
1-2. リングキー or カバードキー
価格は同じです。
リングキーの方が明るい音のようです(真偽及び精度不明)。
判断:リングキー(気分的に)
1-3. C足部管 or H足部管
普通はC足部管です。H足部管にすると5万円ぐらい価格アップ!
H足部管は柔らかい音になるみたいです(真偽及び精度不明)。
H足部管の場合はカバードキーだと音色が暗くなりすぎるので、リングキーとの組み合わせが普通のようです。
判断:H足部管(気分的に)
↑元々、色々な調査結果や筆者の印象も書こうとしたですが、やっぱり「わからない」ので、このぐらいにします。それぞれ、影響あるかもしれないし、ないかもしれないような感じです。
(私の場合は持ち替えとEメカが絡んで影響あった・・・Eメカなしで問題ない人もいるかと)
【ポイント2】材料・製法
価格の違いは材質と作り方の違いです。
洋銀製(5万円クラス)
頭部管銀製(10万円クラス)
管体銀製(30万円クラス)
総銀製マシンメイド(40万円クラス)
総銀製ハンドメイド&引き上げトーンホール(60万円クラス)
総銀製ハンドメイド&ハンダ付けトーンホール(90万円クラス)
金製(100万~数100万円)
洋銀は明るく響く音、銀は地味だが高級感溢れる音、金は前2者を両立する。
ついでに、洋銀は長年使うと変形しやすい、銀は長年使うと硫化して黒くなる、金はクソ高い!
ついでに、ハンダ付けトーンホールは職人の手間がかかるけど、管体そのものを変形させないので均一な管が実現し、音も均一で輪郭が出るらしいです。
すると、筆者の環境で「現場に強い」の観点で選ぶと「金→洋銀→銀」の検討順になりそうだが、やはり無難に「銀」ですかね。
まず、金は高すぎ!
やはり手が出ない・・・学生時代よりは余裕があるけど、贅沢言い出したら切りがない。
あと、同じ楽器を長く使いたいので、洋銀より銀が良いかな。
でも何か、単にアマチュアに届く価格で選んでるような気もします。ホントに自分の頭を使って選んでいるのか疑問は感じつつ。
ただし、他を使い比べたわけじゃないので何となく、なんですが、「銀は成長する」のだと思います。
これは試奏ではっきりと体感できました。20年ぐらい使っている総銀製の「ミヤザワ プレビュー1」がワンランク上の新品を軽々と圧倒してしまいます。Eメカ問題さえなければ、それこそ「現場に強い」楽器に、いつの間にかなってたのです。ここまではっきりした「音抜けの差」はサックスでは感じたことがありません。
金のレヴューを聴きたいです。
【ポイント3】メーカー
3-1. 音色
国内の大手の製品を選ぶ限り、どれも性能はほぼ一緒です。
違いは音色にあります。
フルートは、大音量と繊細さが両立しません。メーカーによって、どちらかを重視するかの考え方が異なります。
総銀製ハンドメイドクラスの場合、概ね以下のような世評のようです。
音量重視:サンキョウ、ムラマツ
繊細さ重視:アルタス
中間的:パール、ミヤザワ
3-2. デファクトスタンダード
もちろん「上手いのか下手なのかは客が決めること」なんですが、いわゆる「定番」があります。
総銀製ハンドメイドの場合、ムラマツのDSモデルが定番のようです。
新品同士の比較なので、判断のポイントとして(もちろん購入の第1候補として)定番モデルを入れておくのが無難です。
ただし、一部の世評によると、一昔前(って、いつだろう?)と違って、最近のムラマツは明確な「音量重視」に方針転換したようで、必ずしも定番とは言えないという説もあります。まぁ、どこの世界にも定番に難癖つけたい人はいるものでして、アンチムラマツ派の陰謀かもしれないので話半分に・・・
話を最初に戻します。
筆者のシチュエーションは「フルート1人、オーボエ1人、クラリネット1人、金管楽器17人!、打楽器2人の編成で、サックスとの持ち替えで、フルートを持った時は主にクラシックを演奏する」という、かなりアホな状況である。
すると、多数の金管楽器の中で少しでも聞こえるように「音量重視」を選ぶべき環境のようです。そりゃ、トランペット5人のユニゾンの後にフルートソロが出てくれば、細かい話が何だろうとフルートの音なら比較の問題で乙女チックに聞こえるだろうさ。
そこで、音量重視を軸に以下の3メーカーに絞りました。
本命:サンキョウ セミハンドメイド or アーチストPA(1ランク下の総銀モデル)
対抗:ムラマツ DSモデル
注意:パール F9800 or F8800(1ランク下の総銀モデル)
あ、ホントは現在使っているミヤザワ(同クラスの新品)も比較対象に入れておくべきでした。
歌口の形状への慣れで不正確な判断するのが心配なので外しましたが・・・吹けないことへの自信なさだったか・・・
参考までに、30万以下の楽器の場合はヤマハが定番らしいです(筆者は未試奏です)。
ちょっと休憩
「試奏編」です。
さてさて、早速楽器店へ走る!
フルート買うなら、在庫が豊富な山野楽器でしょう。
着いてみると、うーむ・・・何だか、筆者のビジュアル面や演奏スタイルを考えると、その高級感溢れる雰囲気がとっても居心地悪いのですが・・・「銀座!」「フルート!」「サロン!」ですよ・・・おいおい・・・
「でも、現場で使う道具を買うんだから、店の雰囲気なんて関係ない。唯一考えるのは「客席」の雰囲気なのだ。怯んでる場合じゃない!」
というわけで、最初に目が合った店員に間髪入れずに声をかけると・・・その店員、うら若き女性で、まさに「趣味はフルートです」って雰囲気でして・・・こっちは、前日に泊まったホテルにひげ剃りがなくて無精髭状態・・・ますます場違い感が・・・
それでも店員さんは親切に対応してくれ、ムラマツDSと吹き比べるならサンキョウはセミハンド、パールなら9800が良いと言い(どっちも「高い方」←正しい商品知識)、だと教えてくれた。
店員:「ムラマツとパールは銀メッキしてませんが」
筆者:「気にしてません。私のは真っ黒です」
店員:「そうですか。私のも真っ黒です」
「フルートサロン」らしくない会話とともに試奏室に連れて行かれ・・・

上から、サンキョウ、ムラマツ、パール。
一番下のが、長年使い込んで真っ黒くなっちゃったミヤザワ・・・
フルート試奏は良い思い出がなくて・・・吹けなかったり、音を出すのがやっとだったりして・・・果たして今回は吹けるのだろうか???
とりあえず、バランス悪い楽器はなかったです。
次に、思ったより音色の差は大きく、メーカー別の世評は正しいみたい。
サンキョウは、最もパワフルな音が出せます。ただし、微妙な吹き加減が難しく、息の狙い方をちょっとずらしただけでスカります。ただ、世評で言われているほど気難しくもなく、十分使える楽器だと思いました。
ムラマツは、パワーはサンキョウにほんの僅かに及ばない感じですが(朝青龍と白鳳の違いぐらい)、ストライクゾーンが広く、どんなアンブシャで吹いても高級感溢れる音が出せます。
パールは・・・積極的に選ぶべき特徴はない感じでした。
ちなみに、音量は今使っているミヤザワが圧倒的です。新品と使い込んだ楽器の違いかと。この真っ黒けミヤザワの特徴は「しなり」がなく、直線的に音が飛ぶことかな。
それに比べれば、試奏している新品の方がフルートっぽいかも。記憶が不正確だけど、今使っているミヤザワが新品の時にも持ってなかった「しなり」がその他全部にあります。速攻でどれか買いたくなる感じです。
持ち替えのこと考えたらムラマツであろう。ただし、シャーマンブラスでベストの状態で吹くなら僅かにサンキョウが鳴るかね?その「僅か」を追求するのも一興かも。
先ほどの店員が入ってきた。
「きれいな音ですね・・・ところで、お決まりですか?」
全く工夫が見られないお世辞はともかく、私は決められない事情を話した。
すると店員は言いました、
「なるほどね・・・3本とも性格が違いますよね。サンキョウやムラマツは自己主張が強い。パールは大人しいですが、表現力があります」
イマイチな環境の想定の中での楽器選びに付き合わされる店員さんも気の毒ではあるのだが、セリフ自体は世評の受け売りだけど、自分で吹いた感じでしゃべっている感じはしました。そして、重要なヒントを得ました。
再び試奏室に1人となったので、再度パールを試してみる。
今までは楽器の素性の比較のためにアンブシャをなるべく動かさないで吹いていたのですが、今度は息の圧力とか唇や喉の力の入れ具合とか色々変えてみると・・・「色々な音色が出せるじゃあーりませんか!」
「これは良い楽器だ! そして、なんて繊細なんだろう・・・」
これを使いこなしてサックスと合わせて様々な色彩感を出すのが、むしろ積極的な「持ち替え」なのでは?
というわけで、今までの検討は全て吹っ飛び、パールで決定!
確かに、今の音色の特徴を保ったままハードな環境での合奏で使える音量に育ってくれるのか、多々不安ではあるのですが・・・
すると、店員さんがもう1つ頭部管を持ってきた。
店員:「こっちの方が息が入りますよ。値段は同じです」
パールはリングキーとカバードキーで標準装備の頭部管が違ってるらしく、PHN-1はリングキーのデフォルト、Vivoはカバードキーのデフォルトみたいです。
試してみると、管体と相性が良いのは今まで試奏に使っていたPHN-1だと思いました。さすがはデフォルトです。Vivoは、確かに息は入りますが、特徴である透明感や微妙な操作性がやや失われ、ちょっとボケる感じがしました。
ただ、何となく思った。
「PHN-1は華奢すぎるかも。それと、私の奏法で吹き続けた時、PHN-1だと音が固いのに音量が貧弱な楽器になる一抹の不安感もあり、Vivoがあるなら、Vivoで管体を育てた方が安全かな~~~(わ、わかりません・・・すごく非科学的です)」
悩んだ末、とりあえずVivoを使ってみることにしました。
何年か後に「やはり透明感や繊細な操作性」ということになったら、PHN-1を買い足しても良いかもしれません。
店員:「金管に負けないで下さいね」
筆者:「そうは言ってもね・・・なので、音量で、という考え方だけじゃないのを今回の試奏で知りました」
店員:「パールはサンキョウやムラマツみたいな音量はないけど、Vivoを使えば鳴りも期待できますよ。頑張って下さい」
お買い上げ有り難うございます。銀60万円也。
Pearl, Handmade Maesta "Silver"

真っ黒になる前の記念写真です。